AIを活用した材料探索ツールを開発

 株式会社レゾナック(社長:髙橋秀仁、以下、当社)は、AI(人工知能)を活用し、材料の最適な組成を従来の5分の1の時間で探索できる独自技術を確立しました。

 当社は、本技術を用いることにより、半導体パッケージ用レジストの感光性樹脂の原料となるポリマー(重合体)の探索に成功しました。この実証を受け、当社は、材料探索の汎用ツールとして本技術の社内展開を開始しました。当社は、本技術の活用により、半導体材料創出の加速を図ります。

 

 半導体パッケージの配線の微細化が進行し、配線を形成するために用いるレジストの感光性樹脂には高い解像度であることが求められています。感光性樹脂を構成する材料のうち、ポリマーが性能に与える影響は大きく、ポリマーには、現像性が良いことや、感度が高いことなど複数の要素が求められます。

 ポリマーは、多数のモノマー(単量体)が結合したもので、これまで、多数のモノマー候補の中からモノマーの組成比・種類も含めた最適な配合を見つけることは、組み合わせが膨大なため困難でした。しかし、当社は、複数の目標特性値を設定し、AIモデルによりこの特性値を満たす最適なポリマー物性を計算した後、アニーリング技術*を適用することで、短時間で最適なモノマーおよび、その組成比を求めることに成功しました。例えば、モノマー100種から5種選び、さらに組成比の合計が100%となるように各モノマーの組成比を1%ごとの刻みで計算する場合(組成比の例: 20:20:20:20:20、10:10:5:5:70など)、従来法では概算で約10万年かかりますが、アニーリング技術を使うと約10秒で計算することができます。

 ここで得たポリマーを用いた試作品は、良好な特性を示すことが実験にて証明され、現在は、添加剤等他の材料を含めた最適化に取り組んでいます。なお、本技術を活用することで、配合から試作までに要した時間は、熟練者が行う場合の5分の1に短縮できました。

レジストポリマー最適化のイメージ

 当社は、本技術を活用して、汎用的な配合最適化システムを構築し、社内展開を開始しました。このシステムでは、ユーザーが組成物の目標物性とそれを構成する原料の物性を入力すると、目標物性に近い原料配合比率を得ることができます。

 本技術は、レジストポリマー設計に限らず樹脂設計や複合材料など幅広い分野に使用できる汎用的な技術であり、レゾナックが強みとする半導体後工程製品へも活用を開始しています。

アニーリングによる配合最適化システム

半導体の技術革新加速に伴い、高性能な材料を迅速に提案することが求められている中、当社は、ミクロ/マクロシミュレーション、AI/MI(マテリアルズ・インフォマティクス)など、計算科学、情報科学をフルラインアップで保有する計算情報科学研究センターのリソースの7割を半導体材料開発に投下し、成果を上げています。

今後も計算科学、情報科学の活用に注力し、時代が求める機能をいち早く創出することにより、グローバル社会の持続的な発展に貢献します。

 

*局所解にはまらずに、高速で最適解を探索することが可能な計算手法。

以上

 

【Resonac(レゾナック)グループについて】

レゾナックグループは、2023年1月に昭和電工グループと昭和電工マテリアルズグループ(旧日立化成グループ)が統合してできた新会社です。

半導体・電子材料の売上高は、約3,400億円に上り、特に半導体の「後工程」材料では世界No.1の企業です。2社統合により、材料の機能設計はもちろん、自社内で原料にまでさかのぼって開発を進めています。新社名の「Resonac」は、英語の「RESONATE:共鳴する・響き渡る」と、Chemistryの「C」の組み合せです。今後さらに共創プラットフォームを生かし、国内外の半導体メーカー、材料・装置メーカーとともに技術革新を加速させます。詳しくはウェブサイトをご覧ください。

株式会社レゾナック・ホールディングス https://www.resonac.com/jp/